マーケターに対する
「事例」の"本当の価値"

『ケーススタディ:マーケターにとって最も有益なコンテンツ』

ケーススタディ、つまり事例研究は、実はマーケターにとって最も有益なコンテンツになるのではないか、我々はそう考えます。事例というと、何を思い浮かべるでしょうか。Web検索する時のキーワードとしての○○事例、資料としての事例集、営業で使う導入事例、コンペの場面における事例紹介など、「説明資料」としての側面をまず想起される方が多いのではないでしょうか。しかし、ケーススタディのと「データ・ツール」としての側面を良く知ると、マーケターにとってケーススタディが現代のマーケティングにおいて比類ない情報を我々に提供し、かつマーケティング/広告業界の働き方改革を実践するツールとしても重要な役割を果たすことに気付きます。
ケーススタディが求められる文脈

”理論を現実の現象と結び付けて理解するためのケーススタディ”

ケーススタディの最たる特性は、「実務で使える理論」を生みだす能力に優れている事です。元来ケーススタディは、既存の理論の枠組みでは説明しきれない現象に対面した時、つまり新たな理論が必要とされた時に、1つ1つ事実の分析を積み重ね、新たな理論を構築する為に用いられる帰納的手法です。
既存の理論の枠組みでは説明しきれない現象に対面する、これは、日々現場でマーケターが直面する状況と似ていないでしょうか。実務では教科書通りの案件などありません。マーケットは流動的であり、消費者の価値観やプレファレンスは変化しています。その結果カスタマージャーニーも日々変化し、様々な派生を遂げます。マーケターは、競合戦略や他業界からの進出など、自社でコントロールできない要因を含め、機会とリスクを常にアップデートしなければいけません。昨日の続きを行うマーケティングではなく、自社を取り巻く非連続的な変化に対応するマーケティングを行わなければならないわけです。
マーケティングには様々な理論やモデルがあります。しかし、それらの理論やノウハウを「どう使えば、”今”の課題を解決できるか」については書かれていません。汎化可能性の高い有名なマーケティング理論は、課題に対して一定の解釈は与えてはくれます。しかし、「だから、どうする」に答えてはくれません。施策、製品要件、コミュニケーションデザイン、メディアプラン、クリエイティブなどについて、「ブランドが直面している課題とその文脈を鑑みて、実務家が何をどうすればよいか」については、一般化された理論は教えてくれません。
それほど現在のブランドを取り囲む諸問題や背景は複雑化している為、1対1対応してくれる理論は存在しないわけです。従ってマーケターは新しい問題に直面した時、1から絵を描く作業を繰り返すことになります。ブランド本質は変わらずとも、そのブランドを価値として翻訳する作業は毎回異なり、新たなインサイトを発見して新しい価値や体験を生み出して、それをコミュニケーション施策や製品企画、クリエイティブなどで適切にアウトプットして提供しなければいけないわけです。そこに正解の型はなく、非定型で属人的な手探りの業務です。
ケーススタディの価値 理論と経験のイイトコどり

”ケーススタディは現象に対して新しい理解の枠組み=理論を与える”

では、マーケティングの実務視点で本当に役立つ理論とはどんな理論でしょうか。それは、実務上ピンポイントで役に立つ理論(Pragmaticな理論)という事になるでしょう。そもそもマーケティングの現場は、甚だ実用主義です。理論が使えれば使う、使えなければ使う必要がない。極論すれば理論である必要すら無く、臨床的な経験知でよいわけです。しかしその一方で経験知にも欠点があります。経験則やノウハウは、属人的だからです。属人的であるが故に、言語化や共有が難しく、基本的には経験知を持つ当人にしか使えない。また、今まで経験したことのない課題に対しても、自分の知っている同じやり方で解決しようとしてしまう。案件ごとのクオリティの平準化も難しい。
逆に、理論と経験知に共通する点は何でしょうか。それは双方とも、問題の原因を俎上に載せ結果に対する予測を提供する機能を持つ、という点です。つまり因果関係を捉えているという点が共通項であり、提供できる因果関係に対する情報次第で「現場で役に立つか/立たないか」が決定されます。因果関係に対する情報の粒度は、一般理論は広範囲な視点から頑健性が検証されており根拠が明確なロジックを与えますが、必ずしも個別案件で実用できるとは限りません。経験知は実務レベルで具体性・実用性の高い情報を与えますが、テーマ限定的であり明確な根拠があるとは限りません。上述したように、実務ではピンポイントで使える情報を提供できればそれでよいので、これらの折衷案が丁度フィットするであろう、と考えられます。つまり、現場における実用主義(Pragmatism)を突き詰めれば、「ロジックの適用範囲はマーケターが現在担当している課題の因果関係に限定されていて構わないので、課題を解決する為の全ての視点と具体的な手段を提供してくれる」何らかの枠組みが求められる、ということです。
普通はそんな都合のよい道具はありません。しかしケーススタディは、この理論と経験知、双方のいいとこ取りを実現します。何故可能かというと、事例分析を通して本質的な因果関係を捉えて理論化するという機能に長けているからです。先述したように、ケーススタディは現象に対して新しい理解の枠組み=理論を与えます。ケーススタディには幾つかの方法論があるのですが、基本的には「事例をデータとして収集して、共通する構造を見つけ出す」ことで理論構築する仕組みを持ちます。この「事例に共通する構造」を見つける事が、因果関係を捉える役目を果たし、ケースの中で起こっている事実が整理され、何が原因系の要因で、どのような条件の下、どのようなプロセスを経て結果が発生するか、という因果構造が導かれます。当然この因果構造の適用範囲はそのケースが収集されたテーマに限定されますが、これをマーケティング実務に置き換えると、
  • マーケターが現在担当している課題における因果関係を解明するロジックの構築
  • その因果関係を踏まえ、課題を解決する為に必要な全ての視点と具体的手段の提供
という条件を満たします。ちなみに「問題解決するに足る全ての視点が集まったかどうか」は、ケーススタディ作成プロセス上の”理論的飽和”という概念によりチェックが行われますが、専門的な話になるのでここでは省略します。つまりケーススタディをマーケティング実務に応用すると、自社ブランドがあるターゲットとシーンに対して行う特定のマーケティング活動と、カスタマージャーニーの変化及び購買行動や売上、ブランド価値等との因果関係を解明し、今後どのような戦略、施策、体験、製品、クリエイティブ、コピーを開発して、どの顧客接点や媒体を通して提供すればよいかというストーリーが得られるツールとなるわけです。
ケーススタディのコンテンツとしての側面

”ケースコンテンツで「勘」と「引き出し」を増やす”

ケーススタディ自体は、1つの過去事例の因果構造を分析したストーリーです。このストーリーは、あるマーケティング戦略の成功の型、もしくは失敗の型です。ケーススタディに数多く触れる事で、マーケターの頭の中にそれらの型が、文脈と因果関係と共に「学び」として、つまり成功パターン、失敗パターンとしてストックされていきます。普通なら実務を通して経験を積む事でしか培われない”勘”と”引き出し”が増える、これがケーススタディの読み物としての価値です。
コンテンツ(読み物)としてのケーススタディは、
マーケターに対して以下の様な価値を提供します。
  • 読み物(コンテンツ)として完成されているレポート
  • データ中の因果関係の捉え方を学び、戦略や施策を導く「事例の引き出し」を増やす
  • 競合や他業界の戦略を学び、自社ブランドでも使える気付きを得る。
  • 失敗パターンを学び、「大きな根本的失敗を回避する」能力を身に着ける
  • 戦略が「実際には何を解決しているか」を学び、「今後何を解決するべきか」を考察する
  • 戦略視点でケースを分析し、マーケティング理論や概念を実務で活用できる知識として体得する
ケーススタディのデータとしての側面

”様々な成功と失敗の事例に含まれる因果関係を蓄積する”

更に、ケーススタディを「データ」として使うことで、一般化された理論では教えてくれなかった「だから、どうすべきか」を導くことすらできるようになります。ここがケーススタディの最大の魅力であり、マーケターにとっての最強のコンテンツ足りうる理由です。その前に、ケーススタディのデータとしての側面について簡単に説明をしておきます。ケーススタディの1つ1つは、特定のマーケティング戦略や施策の「原因と結果」を表すデータであり、それらが集合した時、様々なマーケティングアプローチと成功/失敗という結果についての因果関係を示す”データベース”とります。

このデータベースが内包する”知識量”は膨大です。1つの事例ですら、戦略コンサルタント、マーケティングリサーチャ―、アナリスト、データサイエンティスト、プランナー、マーケター、クリエイティブディレクターなど、多岐に渡る領域のプロの知識と経験によるプロダクトであり、データとしてのケーススタディは、それらのエッセンスを抜き出してパターンデータとして整理した「集合知」です。ケーススタディを数十、数百として学習したシステムがもたらす知識は、1個人が業務に習熟する事で身に着けられる属人的な経験知を、遥かに上回ります。
ツールとしてのケーススタディ 最適な戦略や施策、企画を自動生成

”ケーススタディは属人的で非定型な業務を自動化する”

コレクシアの研究開発部門では、この集合知データの有用性に着目し、マーケターが直面している課題に対して、集合知データから最適な戦略や施策を意図的に取り出す事ができるインテリジェントシステムの構築を目指しました。ケーススタディのデータベースには膨大な”知”が含まれますが、そこから実務の要請に応じて必要な知識や知恵を狙って引き出せなければ意味がありません。従って、マーケターが1から企画や提案を作るタイミングで、ブランドの歴史やビジョン、競合戦略や消費者のトレンド、購買行動の変化、媒体や顧客接点での顧客体験などの現在ブランドが置かれた状況に合わせて、課題解決への最適なロードマップを示し、問題解決へのロジックやタスクフローを提供する事ができるシステムであることを重視しました。

その結果生まれたのが、ケースドリブン戦略/施策開発プラットフォーム『C(M|C)pro』です。C(M|C)proは、ケーススタディデータの中に含まれる豊富な知恵・知識をブランドが置かれた環境に合わせた最適な形で引き出すアルゴリズムを搭載しており、今まで属人的で非定型業務とされてきた、戦略立案や施策提案、製品開発、コミュニケーションデザイン、媒体計画などを自動的/半自動的に行い、完成された企画書や営業提案書、プレゼン資料としてアウトプットする事ができるBIツールです。C(M|C)proで生成される企画やプレゼンテーションは、優れた理論の様にベースとなるデータやロジックがしっかりとあるだけでなく、提案開発プロセスの自動化により、経験の少ないユーザーでも、熟練のマーケターのようにポテンシャルの高いインサイトとそうでないものを切り分け、訴求力の強い価値提案やクリエイティブへと昇華させて、自社のカスタマージャーニーにとって理想的な変化を起こす戦略や施策を生み出す事が可能となります。
手法、ツールとしてのケーススタディは、
以下の様なマーケティング業務を自動化/半自動化します。
  • クライアント施策の成功パターン、失敗パターンの分析
  • 競合、他業界の成功事例、失敗事例の特定
  • KSF、KBFなどの学びの抽出
  • 現状の問題点の洗い出し、優先課題の特定
  • 問題の原因構造の分析、リスク
  • 顧客ジョブによるセグメンテーション
  • クライアントと競合が解決しているジョブ、解決していないジョブの仕分け
  • クライアントが解決しているジョブの売上、利益への貢献の数値化
  • クライアントが解決していないジョブのポテンシャル推定
  • 自社及び競合の戦略の価値算定
  • ターゲットペルソナと現状のカスタマージャーニーの把握
  • 戦略オプション策定、比較評価
  • クライアントがターゲットすべきジョブの決定
  • インサイト探索、インサイトのポテンシャル評価
  • インサイトから、価値提案を開発
  • 目指すべきカスタマージャーニーの設定
  • 現状のカスタマージャーニーに起こすべき変化を特定
  • KPI設定
  • ジョブ解決からカスタマージャーニー変化までのストーリーメイク
  • 行うべき施策、ブランド体験の開発
  • コミュニケーションストーリー/クリエイティブ開発
  • 媒体の使い方のレコメンデーション及び、顧客接点の役割の定義
  • 媒体とメッセージ/クリエイティブの組み合わせ最適化
  • 媒体の費用対効果、導線設計
  • 出稿計画作成
  • 製品コンセプト/サービスコンセプト開発
  • 新製品/新サービス体験ストーリー作成
  • コンセプト評価/予測
  • CS改善企画開発
  • NPS改善企画開発
  • 仕様書作成