コロナによる環境変化で消費者が新たに
価値を認識した商品ー 7人の顧客体験事例

コレクシアマーケティングケーススタディ 特集記事


新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で、今まで利用していなかった商品・サービス・ブランドの新しい価値を認識し、今後新たに利用されはじめたり、利用が増えたりしていくことが予想される7つの事例を解説します。

このシリーズでは、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響により変化した生活者の消費行動について調査を行い、コロナ禍が過ぎ去った後も変化したまま定着すると考えられる、特徴的な生活者変化を3パターンに分類し解説します。

1.利用商品の価値の再認識
・環境変化がきっかけで別の価値にも気づいた
・環境変化により従来よりも価値が高まった

2.未利用商品の価値を認識(★本記事ではこのパターンを紹介)
・身近にあったが利用していなかった商品の価値に気付いた
・環境が変化したことで新しく価値に気付いた

3.価値を感じなくなり利用中止
・代替可能であると気づいてしまい利用をやめた
・惰性で使っていたことに気づいてしまい利用をやめた
■利用商品の価値を再認識した消費者たち

2020年5月14日にコレクシア社で自主調査を行い、昨今のコロナ影響によって具体的にどのような商品・サービスの使い方や選び方の変化が起こったのかを分析しました。この記事ではその中でも、「元々使っていた商品やサービスについて、改めて別の良さ(価値)に気付いたことで、さらに利用するようになったもの」について詳しく紹介していきます。今回の調査では、回答者にこちらが用意した選択肢から選んでもらうのではなく、自分にとって変化したと感じた商品やサービスの選び方・使い方を、自由記入形式で書いてもらいました。今回の調査全体では590件のデータが得られましたが、ここではその一部を紹介します。



今回得られたデータのうち、この記事では特に「コロナが過ぎ去っても生活者の習慣として定着しそうなもの」に特に注目して分類していきたいと思います。表の一覧のうち、赤色にハイライトしている箇所は、筆者が直接読み取って特に習慣化する可能性が高いと感じた回答データです。

ハイライトした回答を見ていくと、特に動画や雑誌の配信サービスの他、冷凍食品やレトルト食品、宅配サービスに関する回答が多く見られます。これらのデータを以下のように、さらに2つの分類に分けてそれぞれもう少し詳しく見ていきましょう。

2.未利用商品の価値を認識

★身近にあったが利用していなかった商品の価値に気づいた
★環境が変化したことで新しく価値に気づいた

 
■身近にあったが利用していなかった商品の価値に気づいた(冷凍食品やレトルト食品、布マスクなど)

環境の変化は、今まで使っていた商品・サービスの、新たな価値を気づかせるきっかけとなりえます。以下のデータを読み解いていきましょう。



 
まず、「冷凍食品などはあまり使っていなかったけれど、料理を作るのに限界がきたときに、使ってみたら案外美味しくて良かった。(41歳女性)」というデータです。この女性は、外出自粛により、毎日自宅で食事を用意しなければならなくなったことで料理を負担に感じるようになり、料理の手間を省くことができる冷凍食品に価値を感じて、使いはじめたのだと考えられます。

似た事例で、「休日は外食が多かったが、家で食べることが多くなり、レトルトのパスタソースを利用しておいしいと思った。(63歳女性)」という回答もあります。以前は、休日は外食をしていたため、食事の用意をする必要がなかったが、家で食べる頻度が増え、休日も自宅で食事を食べるにあたって、何か手軽に作れないかと思いレトルト食品を使ってみようと考えたのだと考えられます。つまり、先ほどの冷凍食品の例も、これまで負担に感じていなかった料理に対して、生活の変化から、作る頻度や人数が増えたことで「負担」と感じるようになり、その負担を軽減するために、今まで利用していなかった商品に対して利用意向が生まれたのだと考えられます。

このような変化は、これらの事例と同様に、生活者の負担を軽くしてくれる商品やサービスが、新たにユーザーを獲得する機会になると考えられます。自社の商品やサービスの利用者がどのような層なのか、どのような負担や悩みを解消するために利用しているのか、利用実態を把握し、商品やサービスが顧客の変化にどう対応するべきかを設計する(リンク)ことで、Afterコロナでの更なる事業成長へとつなげられると考えられます。

また、生活者が新たな価値に気付いた商品・サービスは冷凍食品やレトルト食品だけではありません。従来使い捨てがメジャーであった「マスク」については、「マスクは使い捨てが当たり前だったけれど、何度も洗えて使えて、柄も選べる布マスクはなかなか便利だなと感じます。(31歳女性)」と回答しているほか、「ナプキン」についても「布ナプキン(ライナー)。紙製品の不足に備えて使ってみたら、肌触りが良く、臭いも気にならず、案外良かった。(33歳女性)」のように、従来商品の品薄などの影響から、今まで使ってこなかった商品やサービスが「代替」として購入されたことで、利用が増加していると考えられます。さらに、従来商品やサービスにはなかった「別の価値」を、代替商品やサービスに見出している生活者も多いことが伺えます。

このように、コロナ以前は利用されていなかった商品やサービスが、コロナ以後に利用されるようになったことで「今まで気づかなかった価値」に気づきはじめた生活者が増えていると考えられます。数字上の変化ではなく、顧客の心理・認識の中でどのような変化が起こったのかを理解し、これからのマーケティングの計画を正しく設計することが肝要です。

 
■環境が変化したことで新しく価値に気づいた(レンタルサービス、配信サービスなど)

もう一つのパターンを見ていきましょう。主にレンタルサービスや配信サービスに関する顧客体験では、人との接触を避けなければならないというコロナの影響により、外に出ることなく楽しめるようなコンテンツに価値を感じはじめていることが分かります。



コロナの影響が過ぎ去った後に、これらの消費者が再び元通りにコロナ前の購買行動に戻るでしょうか。恐らくもう変化してしまい、戻らない行動が多く見られるようになると考えられます。今回のデータでは特に60代などの比較的年齢の高い層でも、今後の生活が変わったままとなりそうだという発言が見られており、従来までにイメージしていた生活者像から、コロナ後に対応した生活者像へと、顧客理解を更新する必要があると考えられます。

今回のように、環境が変化したことで新しい価値に気づいた例は、潜在的には様々なブランドや商品・サービスで発生している可能性があります。特に原因不明だが売上や利用者が伸びているような商品・サービスなどは、自社顧客がどのような価値を感じているのかを、今一度正しく理解すべきと言えるでしょう。

 
■「コロナ後に売上が伸びた」≠「Afterコロナへの対策は不要」

以上のように、コロナ後に売上が伸びている場合であっても、利用者層や利用シーンに変化が起きていて、その商品・サービスのどのような側面に価値を感じ、選ばれているかは、コロナ前から変化している可能性があります。その変化は今後の更なる事業拡大のチャンスである場合も、潜んでいるリスクである場合もあり得ます。マーケターがいま行うべきことは、現在起こっている顧客の変化を正しく捉え、今後のマーケティングを続けていくための指針を立てることだと言えるでしょう。

 

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