コロナによる環境変化で消費者が価値を
感じられなくなった商品ー 6人の顧客体験事例

コレクシアマーケティングケーススタディ 特集記事


新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で、今まで利用していた商品・サービス・ブランドに対して価値が感じられなくなり、利用をやめることが予想される6つの事例を解説します。
このシリーズでは、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響により変化した生活者の消費行動について調査を行い、コロナ禍が過ぎ去った後も変化したまま定着すると考えられる、特徴的な生活者変化を3パターンに分類し解説します。

1.利用商品の価値の再認識
・環境変化がきっかけで別の価値にも気づいた
・環境変化により従来よりも価値が高まった

2.未利用商品の価値を認識
・身近にあったが利用していなかった商品の価値に気付いた
・環境が変化したことで新しく価値に気付いた

3.価値を感じなくなり利用中止(★本記事ではこのパターンを紹介)
・代替可能であると気づいてしまい利用をやめた
・惰性で使っていたことに気づいてしまい利用をやめた

■利用商品の価値を感じなくなり利用をやめた消費者たち

2020年5月14日にコレクシア社で自主調査を行い、昨今のコロナ影響によって具体的にどのような商品・サービスの使い方や選び方の変化が起こったのかを分析しました。この記事ではその中でも、「使っていた商品やサービスについて、良さ(価値)を感じられなくなったことで、利用をやめてしまったもの」について詳しく紹介していきます。今回の調査では、回答者にこちらが用意した選択肢から選んでもらうのではなく、自分にとって変化したと感じた商品やサービスの選び方・使い方を、自由記入形式で書いてもらいました。今回の調査全体では590件のデータが得られましたが、ここではその一部を紹介します。



今回得られたデータのうち、この記事では特に「コロナが過ぎ去っても生活者の習慣として定着しそうなもの」に特に注目して分類していきたいと思います。表の一覧のうち、青色にハイライトしている箇所は、筆者が直接読み取って特に習慣化する可能性が高いと感じた回答データです。

ハイライトした回答を見ていくと、特に洋服の他、ヨガやマッサージなどに関する回答が多く見られます。これらのデータを以下のように、さらに2つのカテゴリに分けてそれぞれもう少し詳しく見ていきましょう。

3.価値を感じなくなり利用中止

★代替可能であると気づいてしまい利用をやめた
★惰性で使っていたことに気づいてしまい利用をやめた

■ヨガ教室などの習い事のように外出や人との接触が避けられない商品やサービス

環境の変化は、それまで利用していた商品・サービスの、価値を失わせるきっかけとなりえます。以下のデータを読み解いていきましょう。



まず、「ヨガ教室に通っていたが、密室で大人数になることもあるので、感染予防の為に通うのを控えるようになり、YouTube等の動画でも簡単な動きならできたので、解約した。(36歳女性)」というデータです。この女性は、感染予防のために元々通っていたヨガ教室を控えるようになった結果、自宅で動画配信サービスを見ながらヨガをするようになり、自宅でも動画を見ながら取り組めると気づいたことで、サービスの解約に至っています。

似た事例で、「ヨガに通っていたが今月と来月はとりあえず休会した。自宅用にヨガマットを購入したので休会から解約に変更するかもしれない。(39歳女性)」という回答もあります。先ほどの女性と同じように、通っていたヨガを休会している間、自宅でも取り組めるようにヨガマットを購入したことでヨガに通う必要がなくなり、サービスの解約を検討しています。つまり、コロナの影響により、外出や人との接触が発生するサービスでは、自宅で取り組めるように代わりの商品やサービスへとスイッチしてしまった生活者が、その代替で満足できていることにより、従来の価値を感じられなくなったのだと考えられます。

このような変化は、これらの事例と同様に、外出や人との接触を伴う商品やサービスが、従来の価値を失い、徐々に事業が縮小していく予兆であると考えられます。自社の商品やサービスの利用者が、なぜ離反してしまったのか、代わりにどのような商品やサービスへ移行したのか、利用実態を把握し、商品やサービスが顧客の変化にどう対応するべきかを設計する(リンク)ことで、危機から脱出し、Afterコロナでの事業成長へと繋げられる可能性も秘めています。

また、生活者が価値を感じなくなった商品・サービスはヨガなどの習い事だけではありません。惰性で続けていたサービスに対し、「マッサージ目的で鍼灸を受けていたが、この機会に行かなくなった。スタッフの方との馴れ合いで通っていたけれどやめる良い機会となった。(58歳女性)」と回答している方のように、生活の変化をきっかけに、惰性で継続していた商品やサービスの見直しを行っている生活者が増えていると考えられます。また、在宅時間が増えたり、収入が減少したりすることで、今まで必要と感じていたが、実際は不要だった(価値がなくなった)と感じはじめている可能性も考えられます。

このように、コロナ以前に利用していた商品やサービスが、従来の価値を失い、コロナ以後に利用をやめてしまう生活者が増えていくと考えられます。数字上の変化ではなく、顧客の心理・認識の中でどのような変化が起こったのかを理解し、これからのマーケティングの計画を正しく設計することが肝要です。

 
■洋服のように外出や人との接触がなくなったことで不要になった商品やサービス

もう一つのパターンを見ていきましょう。主に洋服に関する顧客体験では、外出や人との接触を避けるようになったことで価値を感じられなくなり不要になった、コロナの影響を直接的に受けたと言えるカテゴリと言えます。



コロナの影響が過ぎ去った後に、これらの消費者が再び元通りにコロナ前の購買行動に戻るでしょうか。恐らくもう変化してしまい、戻らない行動が多く見られるようになると考えられます。今回のデータでは特に60代などの比較的年齢の高い層でも、今後の生活が変わったままとなりそうだという発言が見られており、従来までにイメージしていた生活者像から、コロナ後に対応した生活者像へと、顧客理解を更新する必要があると考えられます。

今回のように、コロナの影響により従来の価値がなくなってしまった例は、潜在的には様々なブランドや商品・サービスで発生している可能性があります。特に原因不明だが、売上や利用者が減少しているような商品・サービスなどは、顧客がどのような理由で離反してしまったのかを、今一度正しく理解すべきと言えるでしょう。

 
■「コロナ後に売上が減少した」≠「コロナが終息すれば売上は元に戻る」

以上のように、コロナ後に売上や利用者が減少している場合、利用者が感じていた従来の価値がコロナの影響により感じられなくなってしまった可能性があります。このように失われてしまった価値は、コロナが終息したとしても完全にもとに戻ることはありません。マーケターがいま行うべきことは、現在起こっている顧客の変化を正しく捉え、なぜ自社の顧客が離反してしまったのかを明確に把握し、今後のマーケティングを続けていくための指針を立てることだと言えるでしょう。

 

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