書籍発売に寄せて

顧客が「変わる」から、マーケティングを「変える」

 

~顧客の変化を読み解いて「売れる」を再現する 顧客体験マーケティング~


顧客視点とは何でしょうか。
顧客理解とは、顧客の何を理解することでしょうか。

昨今のマーケティングでは顧客を中心にした考え方が主流になりつつありますが、マーケターが顧客と向き合おうとする姿勢を持つことと、顧客の理解をビジネスの「成果」につなげるスキルは別物だとお気づきでしょうか。

また、顧客理解の一環としてアンケートやインタビューをしたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、顧客の声に耳を傾けようとするばかりに、顧客の「現状」にのみ目が行きがちになってはいませんか。

1. 顧客体験マーケティングとは

そもそも、マーケティングにおいて顧客理解が必要とされているのは、「顧客が常に変化しているから」です。特に2020年は、新型コロナウイルスが今までの生活様式や働き方、コミュニケーションのあり方を激変させています。さらに、あらゆる分野でデータとAIが活用され、社会の仕組みや産業構造は転換期を迎えています。

このように社会や生活に変化が起これば、顧客の商品を選ぶ基準や課題解決の優先順位も変わります。その結果、マーケティングに対する反応や購買行動が変わり、前年踏襲的なやり方では通用しなくなっています。そのような局面で、顧客の「現状」だけを見ていても、変化に対応する手だては見つかりません。大事なのは顧客の「変化」を知り、それに合わせて戦略や施策を変化させることです。

変化の視点をもって顧客を理解し、施策に落とし込んで成果につなげる(プランニングする) ̶ これが顧客視点や顧客理解の要点であり、「顧客体験マーケティング」の本質です。

2. データの背景にある顧客のメカニズムを理解する

顧客体験マーケティングにおいて、プランニング力(=企画力)とは「ブランドが起こすべき変化を、顧客の変化から逆算する力」だと言えます。

逆算とは何かというと、データつまり〝結果〞から、データを生み出した原因やプロセスつまり〝顧客がブランドを選んだメカニズム〞を予測するということです。この原因と結果のルールを捉えることができれば、そのルールを逆手にとって現状の認識や行動を変える企てを画(はか)ることもできます。

つまり、これが顧客体験マーケティングにおけるプランニング力(=企画力)です。

3.ブランドが受け入れられるプロセスと、 価値が成立する条件を捉える

実際に〝顧客がブランドを選んだメカニズム〞つまりは顧客にブランドが受け入れられる条件をあぶり出すために、マーケターがまず注目すべきは、一人の生活者が「顧客」に変わるプロセスです。なぜなら、顧客の中で「何がどう変わったから購買したのか」が分かれば、「購買してもらうためには何をどう変えるべきか」は逆算できるからです。そのため、〝実在する顧客の体験〞から学びを得ることが非常に重要になってきます。

マーケターの中には、顧客体験を見える化するために、ペルソナやカスタマージャーニーを作った経験があるという方も少なくないと思います。これらは確かに顧客を理解するには良いツールですが、その理解を戦略や施策に落とし込むツールではありません。また、まず注意したいのは、現実にいない人のペルソナやジャーニーを作り込んでも、それはイメージの確認作業に過ぎないということです。ブランドが価値になる過程で実際に何が起こっているのかはイメージからは発見できません。

顧客理解を施策に落とし込み、ビジネスの成果につなげるにあたっては、〝顧客像〞ではなく、顧客にとってブランドが価値になる〝理由〞や〝条件〞を捉えることが必要になるということです。

最後に

本記事でお話した〝ブランドが顧客に受け入れられるプロセス〞には、ある一定の共通構造があることが分かってきました。書籍『顧客体験マーケティング』では、これを「アクセプターモデル」と呼び、あるべき顧客体験を設計して施策に落とし込むことが誰でもできるようになるための原理原則を提示しています。

いくら顧客理解を深めても、属人性に頼った施策や新規性・面白さ先行の企画に落とし込まれ、結果として顧客不在になってしまっては元も子もありません。本書籍を通じて、誰でもスムーズにブランドが語るべきストーリーやクリエイティブ、製品コンセプトを生み出せる「再現可能な仕組み」を提供することで、顧客の理解をビジネスの成果に結びつけるための手引きとなり、皆さんのブランドが目指す顧客体験を実現する一助になれば幸いです。

 

『顧客体験マーケティング 顧客の変化を読み解いて「売れる」を再現する』(Web担選書)が、

本日8/24にインプレス社より発売となりました。



顧客体験マーケティング 顧客の変化を読み解いて「売れる」を再現する(Web担選書)

著者:村山幹朗、芹澤 連

本書は、「顧客体験」を軸にしたマーケティングの実践方法をまとめたマニュアルです。これまで100以上のブランド、5,000人以上の顧客体験から導き出された「ブランドが価値として成立するプロセス」に基づいて、商品やサービスが「売れる」プロセスをモデル化し、1人の顧客の深い理解から企画やアイデアを生み出す仕組みを解説しています。

 

 

 

こんな人(企業)におすすめです

・顧客理解の必要性を感じているが、どう始めていいのか困っている人

・顧客中心のマーケティングが必要だと感じているが、実践手順がつかめていない人

・「顧客の声を聞いているのに、売上や成果に結びつかない」と悩んでいる人

・データに基づく科学的な施策作りを行いたいと考えている人

・実務で戦略立案や施策企画、製品開発に取り組んでいる人