第4回ウェビナーレポート

実践!ナラティブからはじめるコロナ変化後のマーケティング戦略


~食品カテゴリのマーケティング戦略を顧客起点で設計する手法~


今回開催したウェビナーでは、コレクシア代表の村山から食品カテゴリを題材に、従来どおりでの戦略設計ではなく、顧客起点からマーケティング戦略をどのように設計するか事例を踏まえながら説明がありました。 

1.仮説なくして、数字から戦略は作れない

まずは冒頭、調査結果の定量的データから仮説を立てようとするのが一般的ではあるが、ただ単に数字を眺めていればできるのではなく、マーケター個々人が持っている消費者動向についての知識や実感があるからこそできると村山は述べました。

コレクシアではこの前提から、数値の背景にある顧客体験を見つけることに注力しているとのことでした。

2.「ナラティブ」から顧客仮説を得る

ナラティブ(消費者の語り)とは医療領域で使われているものですが、村山は医師と患者の関係がマーケティングに当てはまると考えています。それは、患者と同じように消費者は自分が本当に欲しいモノを明確には話せませんが、医師となるマーケターはその消費者の内在する考えを元に施策を考えるからだということです。

3.コロナ禍での食品消費の変化をナラティブから読み取る

コレクシアではコロナ禍による食品消費の変化を独自に調査していました。ウェビナーでは7つの事例を取り上げました。

・炭酸水を購入・利用した人のナラティブ

元々便秘がちだった女性はコロナ禍で運動不足になり、便秘が悪化して健康を害さないか今まで以上に心配になったようでした。そこで試したことのない炭酸水を飲むようになったとのことです。

・梅干しを購入・利用した人のナラティブ

コロナ禍により食品の殺菌作用を意識するようになった女性は、梅干しを購入するようになったようでした。また、甘いものやフライなどを食べても梅干しによって罪悪感が薄れると考えたとのことです。

・乾燥納豆を購入・利用した人のナラティブ

コロナ禍で買い物に頻繁に行けなくなった男性は、生鮮食品が不足し栄養も偏ると考えました。そこで今まで買ったことはなかったが、乾燥納豆であれば長期保存できるし栄養もあるということで買い始めました。

・レトルトカレーを購入・利用した人のナラティブ

レトルトカレーは美味しくないと思っていたので買ったことはなかった女性は、コロナ禍で外に出たくなかったので試しに食べてみたら美味しく、また自宅で自分の気分を高めるのに使えると気付いたとのことです。

・カット野菜セットを購入・利用した人のナラティブ

自宅で野菜を多く安く摂取するためにはどうしたらよいか考えていた男性は、カット野菜を購入するようになり、結果便秘も無縁になって健康的になったと実感するようになったとのことです。

・袋麺を購入・利用した人のナラティブ

自炊するのが増えたが、炒めるだけで簡単に焼きそばが作れる袋麺を購入した女性は、アレンジしたのを夫に褒められたことで少し手間をかけることも楽しいと思うようになったとのことです。

・缶詰入りコーンを購入・利用した人のナラティブ

野菜が採れない罪悪感があった女性は、野菜の価格が高くて、品薄で困っていた。そこで缶であれば長期保存でき手軽に買えるので、コーン缶詰を買うようになったとのことです。

7つのナラティブの詳しい分析・解説は、実際のウェビナーの動画でご覧頂くことができます。
ウェビナー動画はこちらから。


4.ナラティブを読み活用するために「アクセプターモデル」を使う

コレクシアではナラティブで顧客理解をし、顧客体験を設計することを念頭に置いているとのこと。
そのために、アクセプターモデルという構造を使うことで顧客体験を再現できるように設計しています。
上記の7つの事例もこのモデルに沿ってナラティブのデータが取得できるように設計しています。



アクセプターモデルについて詳しくはこちらで解説しています。

5.ナラティブから戦略を組み立てる

続いて、村山からSTPマーケティング手法を使って戦略を立てるときの考え方について述べられました。

① STP分析を行うときにおこりえる問題点

その名の通り、S(セグメント)→T(ターゲット)→P(ポジション)という順番で決めていくときに、以下のような問題が起こりえるとの説明がありました。

・そもそもどうやって市場を分けるべきか?
- 20代女性だから、30代男性だからこうなるはず!とは単純にはいかない

・ターゲットは決まっても、ポジショニングはどう決めればいいか?
- ターゲットのペルソナやインサイトが分かっても、ポジショニングを決めるのにアイデアが飛躍的になりがち

・ターゲットを決めるもポジショニングが上手くいかないので、セグメント設計からやり直す
- セグメント設計、ターゲット決め、ポジショニング決めをぐるぐる何度もやり直す

・そもそも競合がいるのでは?
- STP分析では競合を考えることがないので、決まったポジションに既に競合がいると後から気づきやり直す

② 顧客起点でSTPを組み立てる順序

以上のような問題点が起こるため顧客起点で考えたらどうかと村山からウェビナー参加者へ問いかけがありました。

・ナラティブ分析で顧客に成立しているP(ポジション)を先に見つける
- 顧客起点、つまりナラティブ分析で顧客を観察することで、既に市場で成り立っているポジションを見つけられる

・そのポジションの仮説が成り立つT(ターゲット)の条件の定義を決める
- ポジションを軸として、ターゲットを決める

・そのターゲットを含むS(セグメント)で市場を把握
- ターゲットをうまく切り分けて、市場を分けるためのセグメントを決める

という、P→T→Sという一般的なものとは逆の流れで設計したらどうか?と村山は提案しました。
市場で既に成り立っているポジションを分析する顧客起点での設計により、何度も設計作業を繰り返したりすることなく、効果的な戦略を立てられると考えています。

③ ナラティブが示す顧客のジョブの「規模」を推定する

コレクシアが行っているナラティブ分析とは一人ひとりの定性分析であるため、あくまでも一例と考えられます。
そこでコレクシアではナラティブから得られたジョブを定量検証しているとのことです。

今回のナラティブ分析の定量結果は以下の図のようになっています。



この結果から定量的にはある程度規模が推定できるのが分かります。

ジョブを特定した後で定量検証することで、実際にポジション決めする候補を特定できると村山は述べました。

④ ジョブを調査項目化する為のヒント

ここで、定量調査する上でのヒントがありました。

「こうありたい」+「けどこういう課題がある」

といったアンケート回答者の葛藤の気持ちが表れるような形にすることが重要とのことです。この葛藤する気持ちを持っている人がどれくらいいるかが、ターゲットとする市場の最大規模になるので有効的だと村山は述べました。

ちなみに、ターゲットプロファイルもこの方法で定量的に分かるとのことです。
(コレクシアでは、消費者行動類型というプロファイル特定手法もあります。詳しくはこちら

6.まとめ

今回のウェビナーをまとめると以下のようになります。

・ナラティブそのものが、「お手本」となるポジショニングストーリーとなる
・ナラティブを把握するときは、アクセプターモデルが有効である
・STP分析で言えば、まずはナラティブからポジショニングストーリーを得て、それを定量分析することでターゲット市場を特定でき、セグメントを設計できる