意味接点とは|ブランドが顧客の生活価値に変わる接点の管理

意味接点とは
ブランドが顧客の生活価値に変わる接点の管理
2021/07/30


●マーケティング課題

・そもそも自社ブランドは、消費者にとってどんな価値なのか。
・顧客の価値はどう変わってきたのか。どうリポジショニングすればよいのか。
・何が自社の強みで、どう差別化していけばいいのか。


 
■課題の背景

世の中が変化すると、顧客を取り巻く生活も変化します。生活が変化すると、ブランドの使われ方や、価値になる便益も変わってきます。つまり、消費の意味が変化するわけです。

例えば昨今の消費傾向として、同じブランドでも今までと異なるジョブ(目的)のために購買されるという「意味の多様化」が起きています。データでは同じ"購買"ですが、何のために買いどう使うのか、という部分で分岐するため、今までと同じつもりで広告していたら、実は想定外の競合と戦っていたという事態が起こるわけです。

こうした視座に立つと、TVCMやSNSといったメディアでの「伝える接点」と同様に、顧客の生活の中に「ブランドを使う意味の接点」を生み出していくことが重要な課題になります。こうした潜在的な変化に対しては、「意味接点の理解」が効果的です。

 
●解決アプローチ

・消費者の普段の生活の中で、ブランドのどの特徴がどんな価値になっているのかを図で見える化
・消費者にとってのブランドの価値の変遷をアウトプット
・自社ブランドをどのような価値としてポジショニングすれば、最も体験価値が大きくなるのかを理解する。

ブランドが使われる生活シーンのことを「生活接点」と呼びますが、特に、ブランドが顧客の生活上の意味に変わる接点のことを、コレクシアでは「意味接点」と呼んでいます。




意味接点を把握することで、そもそも消費者にとってのブランドの価値がどう変わってきているのかという「価値の変化」を軸に、ブランドのどの機能がどんな生活場面で価値になるのか、どの側面で戦えば競合を上回ることができるのか、を考えることができるようになります。

つまり、ブランドが利用される生活場面やシーンを理解して寄り添うことで、多様化した消費の意味に対応し、ブランドが買われる機会を新しく創出していく、という考え方です。

 
■どういう場面で役立つのか

発売からしばらく経ち、ある程度の売上はある。どんな顧客が買っているのかも何となく分かっている。しかし、今のままではカテゴリーキングを取れるほどでもない。これからどう事業として育てていくのか、一度ちゃんと考えておく必要がある。

新製品開発や新サービス開発の初期フェーズにおいて、自社も競合も対応していないホワイトスペース、ブランドのリポジショニングが成功しやすい市場、潜在需要があるにも関わらず競合がいない市場を見つける。

特定の生活シーンや生活上のイベントを顧客接点と捉えて、「その接点において、ブランドがどういう価値として認識されるべきか」というゴールの下、製品要件や広告のストーリーを組み立てる。

 
●タスクフロー

1.顧客のナラティブを通して、消費者の自然な1日の流れを把握する
2.生活の中でブランドが利用される生活接点を特定し、その接点における消費・使用の意味を読み解く
3.ブランドが顧客にとってどんな価値になっているのか、1日を通してブランドの価値がどう変化しているかを分析する
4.顧客の価値に対して、現在ブランドのどの機能や便益が対応しているか、もしくは対応できていないかを整理する
5.ブランドが現在対応できていない差分を見つけ、商品の要件や広告メッセージに落とし込む


 
■消費者とブランドの「意味の接点」を見つける

ブランドは製品や広告を通して様々な情報を消費者に届けますが、ブランド側が伝えたい内容がそのまま消費者に伝わるとは限りません。消費者は、世の中の出来事や情報を理解するための主観的なフィルターを持っており、広告などの外部からの情報はそのフィルターを通して解釈された後に記憶されます。つまり、ブランドが届けたいメッセージや価値が消費者にどう解釈され、どう記憶されるかは、そのフィルター次第ということになります。

ナラティブアプローチは、消費者との対話やジャーナル(日誌)を通して、そういったフィルターの働きを物語として明らかにするアプローチです。オンライン調査でもデータ収集することが可能です。意味接点を分析する場合には、消費者の自然な1日の流れを追う中で、どういう生活接点でブランドがどう使われているのか、その接点においてどんなジョブ(目的)を達成するための手段として使われいるのか、といった消費の意味を読み解いていきます。そうすると、次のようなアウトプットを得ることができます。





■意味のホワイトスペースを見つけて、埋める

このアウトプットの中で着目すべきなのが、右列の「価値の変化」です。ブランドが顧客にとってどんな価値になっているのか、生活場面が変わるとブランドの価値がどう変化するのかを明らかにすることで、実際の顧客価値に対して、ブランドのどの機能や便益が対応しているか、もしくは対応できていないかを整理することができるからです。





この例では、あるメンズ用の化粧水ブランドが「髭剃り後の肌の保護ができる」、「保湿成分が落ちない」、「いつもより清潔感を持てる」、「明るい肌でリモート会議に臨める」という4つの価値として成立していることが読み取れます。その内最初の3つについては現在のベネフィットで対応できていますが、最後の「明るい肌でリモート会議に臨める」については、現在のブランドでは対応できていないことが分かります。

これはN1の意味接点なので定量検証が必要ですが、もしこうした「意味のホワイトスペース」の規模が大きいことが確認できれば、新しい市場、サブカテゴリを創るチャンスになります。潜在需要があるにも関わらず、対応するベネフィットがないので、ポジショニングが成功しやすいからです。

 
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