第1回ウェビナーレポート

変化を捉えたマーケティングプランニング

 
~「仕事の隙間時間」市場の顧客データニーズに基づくプランニング手法を学ぶ~


先日開催したウェビナーでは、弊社代表の村山が登壇し、実際に仕事のすきま市場の顧客変化の市場調査データから、市場の状況と原因をみつけ、実際にコミュニケーションストーリーを作成し、プランニングまで行うまでを解説・ご紹介しました。

弊社の調査で、コロナ禍において、商品の選び方や買い方に何かしらの変化があったと感じている人の8割以上が、今後コロナウイルスが過ぎ去っても「以前の購買行動には戻らない」と自覚していることが分かりました。
生活者の認識は変わってしまい、元通りには戻りません。
では戻らない生活者に対してどのようにマーケティングをしていくべきなのか。
コロナにおける生活者の変化を定量的に分析したのち、変化に対応したプランニングを実際に作成し、変化した生活者にどのようにマーケティングしていくべきか提言しました。

1生活者の変化
「消費者はもう元には戻らない」とは、マーケターにとってどういった意味なのでしょうか。
消費者の認識に対してブランドはなんらかの価値を提供し、ブランドの価値が受け入れられますが、コロナウイルスの影響で消費者の認識が変化してしまっています。
消費者の認識が変化したということは、ブランドの提供する価値が受け入れられなくなってしまう可能性があり、ブランドは変わってしまった消費者に対してどのように価値を軌道修正していけばよいのかを考えていく必要があります。
社会が変化する中で、マーケターが認識すべきことは、顧客の認識=カギ穴、ブランド価値=カギと例えると、カギ穴の変化を知ること。つまり、変化に対応した顧客体験の実現(新たなブランド価値の提案)が必要です。

今後マーケターが行うべきことは、
①顧客の変化を知る。
②変化した顧客にポジショニングできる顧客体験を実現。
この2つを行うことが、マーケターが変化に対応したマーケティングを実現するために必要なことであるといえます。

2変化を図る定量分析

生活者の行動が変化したことが明らかになっており、マーケターの方々は売れ行き等のデータは観測できているかと思います。ですが、その消費の裏にある認識を理解しなければなりません。
そのため、実際に消費者の認識を知るための市場調査を行い、仕事のすき間時間に摂る飲み物や食べ物に関する計35カテゴリに対してデータをとり、どんな商品を選ぶようになったり、選ばなくなったりするようになったのかを調査し、実際に認識変化のどの部分に原因があったのか分析しました。


 調査では、商品選択の変化としてコロナ前後で減少幅が大きなものにはチョコレートや缶コーヒーがあり、減少幅の小さなものとしては乳酸菌飲料やレギュラーコーヒーなどがあり、カテゴリによって大きかったり小さかったりすることが伺えました。

実際に選ぶに至った行動の裏側には認識変化があり、認識変化を捉えていくことが実際にマーケティングをする上でのヒントになります。

今回のウェビナーでは、レギュラーコーヒーを題材にコロナ前後で顧客流入流出の規模を算出し、認識変化の何が原因だったのかを分析しました。
まず、レギュラーコーヒーの流入元として最も大きいのはチョコレート市場だということが分かりました。
なぜチョコレートから顧客を奪えたのか?なにが刺さったのか?を求めることがコーヒーの強みとなります。
流入が起こった原因であるコーヒーの強みは、「ゆったりとした時間が過ごせる」という結果ができました。

次にレギュラーコーヒーからの流出の規模を推計で算出しました。レギュラーコーヒーからは緑茶へスイッチしている人が多い結果になりました。離反原因は、仕事の切り替えがやりづらくなったという認識変化の数値が高く、競合に対しては、レギュラーコーヒーが持つ世界観を訴求することでレギュラーコーヒー購入率が高まることが分かりました。




上記の図のようにまとめると今回のコロナによる変化で、どの市場を狙うべきか、その時奪うべき競合と充てるべき自社の強みは何か、一方で、リスクとなる競合とそれを回避するために充てるべき自社の強みは何か、が一貫して把握できます。

今回レギュラーコーヒーで分析を行いましたが、他のカテゴリについても、どこからどこに流れているのか、そしてその原因の認識変化は何だったのかという認識変化を掘り下げていき、市場環境の分析をして、背景にある認識変化は何だったのかを分析します。


この定量的な認識変化の原因が結果として出ましたが、調査結果が出た後に、どういう風に実際の施策を作って顧客を留めていくのかがマーケターにとってはより重要な課題となります。

3変化をつくるナラティブ分析

変化している顧客に対しては、顧客の語りを基にナラティブ分析を使って施策を作っていきます。
今回のウェビナーでは、レギュラーコーヒーを購入するようになった実際の顧客の語りを基に、ナラティブ分析を使って、ブランドを売っていくための顧客体験ストーリーを実際に作成します。



ナラティブ分析は、実際に獲得できている顧客が変化した体験のナラティブ・顧客の語りから逆算して、同様の顧客獲得を狙ってマーケティングで再現するストーリーをつくります。

ですが、ナラティブをただ取ればよいというわけではありません。コミュニケーションを設計するには、コミュニケーションにとって必要な要素が存在し、その要素に沿ったナラティブをとる必要があります。

そのために、今回のウェビナーでは、実際にナラティブを施策に落とし込む為のフレーム「価値成立プロセス」をご紹介しました。

 

 

価値成立プロセスは、実際にコミュニケーションの構成の中でブランドが消費者に受け入れられる過程で起こっていることを4つの段階で構成し、ナラティブを観察して得られた情報を組み立て、再構成するために使える“型”です。
この価値成立プロセスの型を使い、N=1のナラティブで個人の行動を規定している背景を理解し、普遍的に適用できる「認識変化を起こすためのルール」を抽出し、ブランドが生活者に寄り添えるストーリーをつくります。

今回のウェビナーでは、実際にレギュラーコーヒーを例に作成しました。実際にこの生活者の方はもともと、仕事の合間に毎回「缶コーヒー」を自動販売機で買っていたものの、新型コロナウイルスの流行後は接触を避けるため、ショッピングモールで挽かれたコーヒー豆を購入し、自宅でドリップしてレギュラーコーヒーを飲むようになった方です。
ナラティブ分析の最初の手順として、まずナラティブの違和感をみつけます、缶コーヒーが好きならケースを買っても、ペットボトルやインスタントのコーヒーを買ってもよいものの、レギュラーコーヒーを選んでいます。
その違和感からナラティブを読み解き、この生活者が解決したかったジョブを見つけます。

ナラティブを見ると「リフレッシュできる」という回答もあり、コーヒーを飲むために「缶コーヒーを都度自動販売機で買う」「レギュラーコーヒーを都度淹れる」ことで、「仕事から離れ休憩する時間へと切り替えたい」という生活者の本来解決したかった課題が仮説として出ました。
ウェビナーでは、このナラティブ分析結果を基に、実際に価値成立プロセスにあてはめ、コミュニケーション施策の作成方法をご紹介しました。


実践方法の詳しい解説は、実際のウェビナーの動画でご覧頂くことができます。
ウェビナー動画はこちらから。


どんな描写、どの価値成立プロセスを軸にしたストーリーにすべきかを事前に定量検証テストした上で実行するといった方法や、ナラティブ自体をどういった人から取ってくるかということを定量的な根拠を基に実施することもあります。定量的な検証を組み合わせることにより慎重に、より根拠を踏まえて実行することができます。
ブランドイメージを訴求するようなCMの場合などは、価値成立プロセスはあえてすべての描写を描かず感じてもらう表現もあります。価値成立は意識するものではあるものの、必ずしもプロセスを全て描く必要はありません。

また、動画CM以外の顧客体験も価値成立プロセスから作れる、と提示して、今回のウェビナーは締めくくられました。

弊社では今回のウェビナーで取り上げたコーヒー以外にも、「仕事のすきま時間」に関する商品の買われ方・選ばれ方の変化を調査しています。

次のウェビナーでは、美容・化粧品カテゴリ商品をピックアップし、コロナウイルスの影響で身の回りの状況や働く環境に変化が起きたことで、顧客の消費傾向がどう変化したかを分析します。
※ウェビナーは終了しました。