第5回ウェビナーレポート

実践!変化した暮らしに受け入れられた商品は、どのように消費者に選ばれたのか


今回開催したウェビナーではコレクシア代表の村山が登壇し、家電・耐久消費財を題材に変化した暮らしに受け入れられた商品はどのように消費者に選ばれたのか、マーケティングSTP設計を実戦形式で事例を踏まえながら説明がありました。

1.数字を生み出した背景にある、顧客体験を読む

まずは前回同様、調査結果の数値データの背景にある顧客体験をきちんと把握することが重要であるとの話がありました。今年は生活様式の変化が激しい一年だったが、数字の裏側にある顧客変化を見ることで、正確な戦略が立てられると村山は述べました。
2.「ナラティブ」から顧客仮説を得る

ナラティブ(消費者の語り)とは医療領域で使われているものですが、村山は医師と患者の関係がマーケティングに当てはまると考えています。それは、患者と同じように消費者は自分が本当に欲しいモノを明確には話せませんが、医師となるマーケターはその消費者の内在する考えを元に施策を考えるからだということです。

3.コロナ禍での顧客変化をナラティブから読み取る

今回のテーマの一つである調理家電を中心に、その他の家電の調査結果もまとめると、
・免疫力や衛生面を強化したいニーズが高まっている
・料理が苦手でもコロナ禍で自ら調理しなくてはならない状況が増えた
・(ただ)面倒ではなく簡単にできることを重視されている
といったナラティブがあることが分かったとのことです。


今回は定量的なSTP設計をメインで話されたため事例は多くは語られませんでしたが、これまでのウェビナー動画や記事から多くの事例を見ることができるようなので、そちらも参考するといいでしょう。

・過去のウェビナーレポートはこちらから。

・過去のウェビナー動画はこちらから。

4.ナラティブを読み活用するために「アクセプターモデル」を使う

コレクシアではナラティブで顧客理解をし、顧客体験を設計することを念頭に置いているとのこと。
そのために、アクセプターモデルという構造を使うことで顧客体験を再現できるように設計しています。
上記の7つの事例もこのモデルに沿ってナラティブのデータが取得できるように設計しています。



アクセプターモデルについて詳しくはこちらで解説しています。

5.ナラティブから戦略を組み立てる


続いて、村山からSTPマーケティング手法を使って戦略を立てるときの考え方について述べられました。

① STP分析を行うときにおこりえる問題点

その名の通り、S(セグメント)→T(ターゲット)→P(ポジション)という順番で決めていくときに、以下のような問題が起こりえるとのことです。

・そもそもどうやって市場を分けるべきか?
- 20代女性だから、30代男性だからこうなるはず!とは単純にはいかない

・ターゲットは決まっても、ポジショニングはどう決めればいいか?
- ターゲットのペルソナやインサイトが分かっても、ポジショニングを決めるのにアイデアが飛躍的になりがち

・ターゲットを決めるもポジショニングが上手くいかないので、セグメント設計からやり直す
- セグメント設計、ターゲット決め、ポジショニング決めをぐるぐる何度もやり直す

・そもそも競合がいるのでは?
- STP分析では競合を考えることがないので、決まったポジションに既に競合がいると後から気づきやり直す

誰に、何を価値に感じて買ってもらうかが大事であり、それを組み立てる戦略が述べられました。

② STP設計をするための手法

STP設計をするための便利なツールとして次のような手法が紹介されました。



図のように、列(緑色)ではセグメントを表せられるような項目を列挙し、行(オレンジ色)では訴求軸となる項目を列挙したマトリクス表を作成し、「誰に何で訴求すればよいか」が定量的に分かるとのこと。
表の数値は調査結果から市場規模を算定したものです。

このセグメントとなる項目は「〇〇したい、〇〇になりたい」といったジョブを仮説する項目になり、訴求軸となる項目は上記のアクセプターモデルの受容価値を仮説する項目となりえるとのことです。

③ ジョブ×受容価値 の組み合わせにおけるシェアをみる

続いて、上図のオレンジ色で塗られた箇所(ジョブ×受容価値)のシェアが実際にどれくらいあるのか説明されました。これは、上記のSTP分析で起こりえる問題点でも取り上げられていますが、ポジショニングが仮にできたとしても競合分析をしないと実用的にならないため、実際にポジショニングできそうな箇所を見つけ、それをドリルダウンしていく必要があるためのようです。



図を見ると、一番市場規模が大きい「手間をかけずにおいしい料理を作りたい × 掃除やメンテナンスの手間がかからない」ではシャープの製品シリーズが一番シェアが大きく、「料理のレパートリーを増やしたい × 適切な温度まで自動的に温めてくれる」ではパナソニックの製品シリーズのシェアが一番大きいことが分かります。
このように、ポジショニングできそうな軸を見つけ、それの競合シェアがどれくらいかを簡単に把握することができるので、競合に勝てるポジションを見つけられるとのことです。

④ 競合に勝てるセグメント軸を見つける

ここからは、実際に一例を取り上げながら戦略策定する方法が述べられました。

今回は、市場規模の大きい「手間をかけずにおいしい料理をつくりたい」セグメントを掘り下げていきました。
その調査結果は以下の図のようになったとのことです。



「現ユーザー数」、「自社に移動する確率」が調査結果から分かり、「次期ユーザー数予測」が算出できるとのことです。

この図だと、パナソニック製品ユーザーがパナソニック製品を買う確率が50%、それ以外の製品のユーザーがパナソニック製品を買う確率がそれ以外の確率だという意味です。
これより、このセグメント軸の現在のユーザー数は約138万人だが、予測では170万人程度に増えるとの予測ができたことになります。

他のセグメントでも同様に算出すると以下の図のようになります。



これより、自社が競合に勝てそうなセグメント軸が分かるとのことです。

⑤ ある訴求軸は、どれだけ競合ユーザーを獲得できそうか?

今度は「適切な温度まで適切に温めてくれる」という訴求が効果的なユーザーに対しての調査結果について述べました。



これから、「手間をかけずにおいしい料理を作りたい」ジョブのために競合を購買している人に対して、「適切な温度まで自動的に温めてくれる」を提案すると、1.4倍(0.24/0.17≒1.4)自社へスイッチしやすくなる、ことが分かるとのことです。
この考え方はリスク比という考え方をベースにしているようです。

そして、他の訴求軸についても同様に算出してまとめると、以下の図のようになります。



この結果からより効果的な訴求軸が分かるとのことです。今回は「適切な温度まで自動的に温めてくれる」が効果的だと分かりました。

以上の方法から、「誰に何で訴求すべきか」が数値として表せられるようです。

⑥ 戦略策定の方法まとめ

今回のまとめとして、以下の内容が述べられました。

・ストーリーを定量検証することができる
・アクセプターモデルはすべての描写をすべて描かない方法もある
・動画CM以外の顧客体験もアクセプターモデルから作れる

・今回実施したウェビナー動画はこちらからご覧いただけます。