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顧客体験の解説 | お酒 |「エビスビール」から学ぶホワイトスペースポジショニング戦略事例

 
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 今回はホワイトスペースポジショニングの事例として、"エビスビール"の事例を紹介します。このケーススタディで紹介する生活者は、長く自分にしっくりくるビールを探してきた男性(68歳)が、奥様と一緒に楽しめる、味もしっくりきたビールとして、エビスビールに出会えた、という顧客体験をご紹介します。この体験価値は約「25-50万人」の顧客層に訴求できたと推定されます。※1
ホワイトスペースポジショニングで継続購買を促す

ホワイトスペースポジショニング

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継続購買

 今回、コレクシアマーケティングケーススタディでは、「エビスビール」を例に、ホワイトスペースポジショニングによって継続購買を促したという構造を持つ顧客体験を収集し、ケーススタディとしてまとめました。本稿ではどんな体験が、どんな課題を持った生活者にどのように受け入れられていったのか、そのプロセスから「ホワイトスペースポジショニングによって継続購買を促す」施策の学びを読み解き、解説していきます。

顧客理解

自分にも妻にも合ったビールに中々出会えなかった

長い間いろいろなビールを試して飲んでいたが、どれも満足できなかった。
妻もビールを飲むので一緒に探していて、今のビールにたどり着くまで時間がかかった。(68歳男性 埼玉県)

相田さん 68歳(仮名)
経営者・役員

 まず、生活者と課題を見ていきましょう。エビスビールを利用するようになった生活者のカスタマージャーニーを紹介します。相田さん(68歳男性 埼玉県)は元々、「自宅でビールを飲むときは妻と一緒に飲む。自分ひとりで飲もうとしたら妻の視線が背中から刺さって冷や汗をかいたことがある。」という方です。自身は目指したいあり方として「自宅でリラックスできる時間を大切にしたい」とも考えている、世帯年収1000~1200万円ほどで、経営者・役員、既婚の男性です。

 しかし、相田さんは、「夫婦互いにこれだ!と思えるビールに巡り合えていない」という課題を感じており、できれば「夫婦一緒に記念日やちょっと贅沢したいときにいいビールで乾杯したい。」という理想を抱いている男性です。では、このような状態の相田さんに、エビスビールがどのような変化をもたらしたのかを解説します。

ブランドの役割と顧客体験の変化

エビスビールで
成立した価値

※2

記念日も普段も妻と仲良く過ごせるビール

ブランドが果たした役割

 現在相田さんは、夫婦の特別な日にエビスビールを利用するようになっています。エビスビールを使用し始めたことで、「妻もエビスのファンなので二人でコップを傾けています。何にも言わなくても十分満足する夫婦円満の秘訣がここにあるのかなと思います。」と話しており、現在はビールを自分が飲むときもグラスは2つ用意し、ビールを一緒に飲むだけで夫婦円満実現できるようになりました。
 つまり、エビスビールは、「ほどよいビール本来の苦み、コクのある充実感」といった味を「相田さんだけではなく奥様も同様においしく感じられた」という商品ブランドの特性により、「一緒に飲むだけで夫婦円満」という価値を相田さんに提供していると考えられます。

顧客体験の変化

 相田さんはエビスビールを利用する以前、「自分ひとりでビールを飲もうとしたら、奥様に「私の分は?」と詰められた」という体験があったため、ビールは自分だけでなく、奥様の好みや状況も考慮して選ぶようになりましたが、長年しっくりとくるビールが見つからず苦労されたようです。ですがその後にエビスビール出会い、自分に合致し利用し続けるようになりました。相田さんはエビスビールについて今は「体にエビスビールが馴染んで親しみを覚えた。究極の味と香りだと思う。自分の人生にとって欠かせないパートナーのような存在になって、満足感と充実感に満たされる思いで、今は嬉しい。」と語っており、相田さんにとってエビスビールは、自分と奥様の人生に欠かせないパートナーだと感じているようです。
図解

エビスビールの顧客体験事例から紐解く

「ホワイトスペースポジショニングで継続購買を促す」の成功要因

※上記図解のように生活者の行動動線とそれに紐づく心理変化を明らかにするカスタマージャーニーの使い方や創り方は
カスタマージャーニーの教科書」をご覧ください。

https://www.journey-navi.com/

体験価値の
市場規模

25-50万人

 本セクションではブランド視点で顧客体験を読み解いて、「ホワイトスペースポジショニングで継続購買を促す」施策のヒントを探っていきます。今回の顧客体験から得られた学びをまとめると、上図のような構造になっていることが読み取れます。

 このストーリーでは、相田さんは元々「できれば夫婦一緒に記念日やちょっと贅沢したいときにいいビールで乾杯したいが、夫婦互いにこれだ!と思えるビールに巡り合えていない。」という課題認識を持っていました。そこに、エビスビールが”夫婦で楽しめるビール”というポジショニングで相田さんに受け入れられたことで、「以前は味が自分に合うかどうかでビールを探していたが、おいしさだけでなく、妻と一緒に楽しく飲めるビールが良いと思った。」という気づきを相田さんに与えました。

 その結果、相田さんの「できれば夫婦一緒に記念日やちょっと贅沢したいときにいいビールで乾杯したい」という理想と、「夫婦互いにこれだ!と思えるビールに巡り合えていない。」という課題は、エビスビールの「夫婦で特別な時に飲むビール」というブランドの価値によってクリアされたと言えます。そしてその結果、相田さんのファン化に成功しました。また、同様の体験は「25-50万人」の顧客層に訴求できたと推定されます。※1

応用可能性~本事例の学び

課題

周辺利用者への負荷

自分の好みだけではなく、一緒に消費する家族の好みと合わせる必要があるなど、複数人が使用に関係する場合の課題。

夫婦一緒に飲むビール
というポジショニング

結果

記念日だけでなく、日常も含めて夫婦で飲むビールとして利用されている。

 
 今回の事例で生活者に起こった変化を構造化すると、上図のようにまとめられます。周辺利用者への負荷を感じている生活者に、記念日に飲むビールとしてエビスビールが対応したことで、夫婦で飲むビールとして日常も記念日も利用され続けるビールとして利用されています。

 この構造を応用することで、他にも「家族や同居人の意見を気にして選ぶ」商品やサービス(例:掃除道具やインテリア 等)についても、購入者だけではなく、同居人と購入者の両方が納得して選べる商品というポジショニングを狙う事で、既存商品では満たせていないニーズに対応し、継続利用に導ける可能性があると考えられます。

注記
"※1 体験価値の規模推定値は、市場調査結果(n=3000)データと人口統計データより、調査データ内の”同じ商品を購入した消費者”かつ、”本稿で紹介した消費者と類似のインサイトを持っている人”の規模から計算しています。

※2 消費者が実際に認識した価値です。企業やブランドが、当初狙って生みだそうとした価値とは異なる場合があります。"