Collexia
Marketing
Casestudy
顧客体験の解説 | ノンアルコール飲料 |
「ゼロイチ」から学ぶトライアルサンプル施策事例
今回はノンアルコール飲料の"継続購買"の事例として、"ゼロイチ(KIRIN)"の事例を紹介します。このケーススタディでは、体に優しくもありながら、ビールらしい味を楽しみたい女性(57歳)が、店頭のトライアルサンプル配布を経てICHIを継続購入するに至った、という顧客体験をご紹介します。
今回、コレクシアマーケティングケーススタディでは、「ゼロイチ」を例に店頭キャンペーンのトライアルサンプル配布が新規購入を促進したという構造を持つ顧客体験を収集し、ケーススタディとしてまとめました。本稿では、トライアルサンプル配布施策のどんな側面が、どんな課題を持った生活者にどのように受け入れられ継続利用するに至ったのか、そのプロセスから「トライアルサンプルで新規購入を促す」施策の学びを読み解き、解説していきます。
お酒を飲みたいが、血液検査への影響も気になる。
体や次の日の予定を考慮しながら、ビールらしい味わいを楽しみたい。(57歳女性 山形県)
まず、生活者と課題を見ていきましょう。ゼロイチを継続利用するようになった生活者のカスタマージャーニーを紹介します。堀内さん(57歳女性 山形県)は元々、「体調や次の日の予定を考慮しながら、
ビールの味わいを楽しみたい」という方です。世帯年収400~600万円未満ほどで専業主婦、既婚の女性です。
堀内さんは「通院しており血液検査の結果への影響が気になるので、体に優しくありつつもビールらしい味わいを楽しめるものがいい」と話していました。あまりに気になる時はお酒を控えた方が良いとも感じています。
では、このような状態の堀内さんに、ゼロイチを購入することがどのような変化をもたらしたのかを解説します。
”ゼロイチで成立した価値” ※1 |
= |
お酒に飲まれることなく、健康を維持しつつも、安心してキリンのビールの味わいを楽しめることで心が癒される。 |
ブランドが果たした役割
堀内さんは現在、ゼロイチを継続利用しています。最初は「いつも行くスーパーでサンプル配布のキャンペーンをしており、キリンという安心できるブランドであることや、パッケージデザインの内容に惹かれたことから試してみたところ、体に優しいのに思っていたより美味しかったので購入した」と話していました。実際に商品を購入して飲んでみると、ビールらしい味わいに喜びを感じ、体調や次の日の予定に気を遣うことなく安心して飲めることに魅力を感じました。更に最近は体の調子もよくなり、ご飯がおいしく食べられることで夫婦の会話も弾んでいること気づき継続購入するに至ったと考えられます。
顧客体験の変化
堀内さんはゼロイチを利用する以前、「通院しているので検査結果への影響が気になるが、本当は体や次の日の予定に配慮しながらもビールの味わいを楽しみたい」という体験で今のままでは良くないと気づかされました。その後、ゼロイチを購入することにより、体に気を遣うことなく、安心してビールらしさを味わえるところに喜びを感じ、さらに、継続的に購入していくうちに、「主人といつものように食事をいている時でも次の日を気にすることなく飲めるし、食事との相性もよい」ことや「体の調子も良くなり、ごはんがおいしく食べられることで、夫婦の会話が弾み、気持ちが通い合っていると感じられる」ということに気づき、ゼロイチを継続購入するようになりました。
図解ゼロイチ(KIRIN)の顧客体験事例から紐解く
「トライアルサンプル施策で新規購入を促す」の成功要因
本セクションではブランド視点で顧客体験を読み解いて、「トライアルサンプルで新規購入を促進する」施策のヒントを探っていきます。今回の顧客体験から得られた学びをまとめると、上図のような構造になっていることが読み取れます。
このストーリーでは、堀内さんは元々「お酒を飲みたいが血液検査の結果が気になる。体や次の日の予定に考慮しながらビールの味わいを楽しみたい」という課題認識を持っていました。そんな時、いつも行くスーパーでサンプル配布のキャンペーンをしており、キリンという安心できるブランドであることやパッケージデザインの内容に惹かれたことから試してみたところ、体に優しいのに思っていたより美味しかったので購入し始めました。その後、ゼロイチを購入する中で、体の調子も良くなり、ごはんがおいしく食べられて、夫婦の会話が弾み、気持ちが通い合っていると感じるようになりました。さらに、「お酒に飲まれることなく健康を維持しながら、キリンのビールのような味わいを楽しめることで心が癒される」という価値が成立して、継続購入に至りました。
応用可能性~本事例の学び
課題
定期通院・検査のために健康・体調面に配慮せざるを得ないため、アルコール消費を控えなければならないが、ビールを飲みたいケース
結果
通院が必要な疾病によりアルコールの身体への影響を気にしつつも、ビールの味わいが好きなためノンアルコールビールでは物足りないだろうと考えている状況で、商品のサンプルを配布し実際に飲んでもらうことにより、事前に懸念していた味のおいしさを実感、食卓での時間を満足させることができ、継続購買を促した。
今回の事例で生活者に起こった変化を構造化すると、上図のようにまとめられます。疾病による身体的負荷や制限による心理的負荷を感じている生活者に、健康・体調面への配慮と好きな味のおいしさが両立できている商品だと、サンプルを配布して実際に飲んでもらうことで体感させることができたと考えられます。また、身体に配慮できていることによる安心感やビールに近い味わいによる満足感から、最近夫との会話が弾んでいるのも飲料のおかげだと感情的にも満たされたことで、継続的な購入に至っています。
あるカテゴリ(ノンアルコール飲料)は自分の求めているレベル(ビール本来の味わい)に達していないという先入観から、カテゴリ商品を購入したことがない生活者には、サンプル商品を配布して実際に飲用してもらうことで、「カテゴリ商品の中でもこの商品だけは自分向きだ」と思わせることができるため効果的だと考えられます。また、店頭での試飲販売と異なり、実際に商品を購入したときと同じシーン(夫との食事中)に飲んでもらうことで、その商品が自分の生活の中でどのような役割を果たしてくれそうかイメージも湧きやすくなるため、実際の購入に繋がりやすい可能性があります。
注記
※1 消費者が実際に認識した価値です。企業やブランドが、当初狙って生みだそうとした価値とは異なる場合があります。
「カスタマージャーニーの教科書」をご覧ください。
https://www.journey-navi.com/