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顧客体験の解説 | リテールブランド |
「無印良品」から学ぶO2O施策事例

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 今回は"O2O施策"の事例として、"無印良品"の事例を紹介します。このケーススタディで紹介する生活者は、なるべく不要なものを持っていたくないが、同居の家族にはあまり理解されていない女性(25歳)が、インスタグラム・公式アプリで感じた世界観により、無印良品のファンになった、という顧客体験をご紹介します。この体験価値は約「5-15万人」の顧客層に訴求できたと推定されます。※1
O2O施策でファン化を促す



O2O施策

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トライアル

 今回、コレクシアマーケティングケーススタディでは、「無印良品」を例に、O2O施策がファン化を促したという構造を持つ顧客体験を収集し、ケーススタディとしてまとめました。本稿では、O2O施策のどんな側面が、どんな課題を持った生活者にどのように受け入れられていったのか、そのプロセスから「O2O施策でファン化を促す」施策の学びを読み解き、解説していきます。

顧客理解

共用スペースでも整理されていないと我慢できない

自分は不要だと思うものでも、家族が「要るから捨てないで」と答えて少し不機嫌になった時。
私は捨てたいけれど、必要だと思う家族がいて、失敗したなと思った。
自分も家族も不要と思わないものであればいいのにと思った。(25歳女性 神奈川県)

田中さん 25歳(仮名)
パート・アルバイト

 まず、生活者と課題を見ていきましょう。無印良品を利用するようになった生活者のカスタマージャーニーを紹介します。田中さん(25歳女性 神奈川県)は元々、「共用スペースでも整理されていないと我慢できない」という方です。自身は目指したいあり方として「自分の部屋の掃除やベットメイキング、整理整頓などを日々の習慣にしている。また、定期的に断捨離をしているが、あくまで自分の物だけにし、家族の物には口を出さないようにしている」とも考えている、世帯年収不明で、パート・アルバイト、独身の女性です。

 また、田中さんは、「部屋で身の回りに置くものを安物で済ませてしまうと、こだわりも感じないし、少し使うと表面が剥がれたりしてみっともなくなる。自分の部屋に満足できなくなる。」と話しており、この時には心理的負荷, 利用しないことで後悔・罪悪感を感じたと話しています。自分の部屋に帰ってきたら、心がウキウキしてテンション上がるようにしたい、と考えている状況です。

 では、このような状態の田中さんに、無印良品がどのような変化をもたらしたのかを解説します。

ブランドの役割と顧客体験の変化

”無印良品で
成立した価値”

※2

家族が使い続けていても、
自分も心地よく使い続けられる

ブランドが果たした役割

 田中さんは現在、「周りやsnsでよく聞く無印良品に興味がわいて、欲しいものがあった時にネットで調べてみたら良さそうなのがあったので実物を見に店頭に行ってみることにした。」という体験で無印良品を利用し、現在はファンになっています。最初は「インスタグラムでブランドの世界観が好きになって、店舗で購入したミニマリストの方のアカウントで、シンプルかつ洗練された雰囲気、木のぬくもりを感じられる部屋の写真を見て惹かれたのがきっかけです。私の好みとも合っていたということもあり、無印良品の家具で自分の部屋を整えたら、その方のようなステキな部屋を作ることができるのではないかと思ったので購入しました。」と話しており、「インスタグラムやアプリでの商品紹介」「店頭での実物確認」という特長が「家族が使い続けていても、自分も心地よく使い続けられる」を田中さんに提供し、ファン化に至ったと考えられます。

顧客体験の変化

 田中さんは無印良品を利用する以前、「家族が要るから捨てないでと答えて、少し不機嫌になった時。私は捨てたいけれど、必要だと思う家族がいて、失敗したなと思った。」という体験をして、今のままでは良くないと気づかされました。その後無印良品を利用することで、「同じ木材で揃えれば統一感のある部屋になり、満足のいく部屋になる。より自分の好きな部屋に近づくので、毎日家に帰るのが楽しみになると思う。」「自分のこだわり抜いた家具なので、長く使えるので、買い替えなどの経済負担が減って節約にもなる。」「家族が使う家具もなるべく無印良品であれば、自分も統一感を感じられて良い」と考えるようになりました。
図解

無印良品の顧客体験事例から紐解く

「O2O施策でファン化を促す」成功要因

※上記図解のように生活者の行動動線とそれに紐づく心理変化を明らかにするカスタマージャーニーの使い方や創り方は
カスタマージャーニーの教科書」をご覧ください。

https://www.journey-navi.com/

体験価値の
市場規模

5-15万人

 本セクションではブランド視点で顧客体験を読み解いて、「O2O施策でファン化を促す」施策のヒントを探っていきます。今回の顧客体験から得られた学びをまとめると、上図のような構造になっていることが読み取れます。

 このストーリーでは、田中さんは元々「共用スペースでも整理されていないと我慢できない」という課題認識を持っていました。しかし、無印良品が、「インスタグラムでの商品紹介と公式サイトでの商品紹介・口コミを提供することで、」によりO2O施策が機能したことで、「家族が使い続けていても、自分も心地よく使い続けられる」という価値が成立して、ファン化に成功しました。また「5-15万人」の顧客層に訴求できたと推定されます。※1

応用可能性~本事例の学び

課題

周辺利用者への負荷

自分の好みだけではなく、一緒に消費する家族の好みと合わせる必要があるなど、複数人が使用に関係する場合の課題。

誰も不快にさせにくい
デザイン

結果

共用部など、好みの違う家族皆が使う場所のアイテムとして選ばれ、継続利用されている。

 
 今回の事例で生活者に起こった変化を構造化すると、上図のようにまとめられます。周辺利用者への負荷を感じている生活者に、好みが違う人でも不快にさせない、統一感あるデザインの無印良品が選ばれ、利用されています。

 この構造を応用することで、他にも「家族や同居人の意見を気にして選ぶ」商品やサービス(例:掃除道具やインテリア 等)についても、購入者だけではなく、同居人と購入者の両方が納得して選べる商品というポジショニングを狙う事で、既存商品では満たせていないニーズに対応し、継続利用に導ける可能性があると考えられます。

注記
※1 体験価値の規模推定値は、市場調査結果(n=3000)データと人口統計データより、調査データ内の”同じ商品を購入した消費者”かつ、”本稿で紹介した消費者と類似のインサイトを持っている人”の規模から計算しています。

※2 消費者が実際に認識した価値です。企業やブランドが、当初狙って生みだそうとした価値とは異なる場合があります。