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顧客体験の解説 | アパレルブランド |
「H&M」から学ぶ公式アプリ施策事例

 
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 今回は"公式アプリ"の事例として、"H&M"の事例を紹介します。このケーススタディで紹介する生活者は、季節ごとの流行に合わせて色々と着たい服を着たいけど、毎シーズンごとに欲しい服を買っているといくらお金があっても足りない、と考える女性(35歳)が、公式アプリ・クーポンにより、H&Mのファンになった、という顧客体験をご紹介します。この体験価値は約「5-15万人」の顧客層に訴求できたと推定されます。※1
公式アプリ施策でファン化を促す

公式アプリ

×

ファン化

 今回、コレクシアマーケティングケーススタディでは、「H&M」を例に、公式アプリがファン化を促したという構造を持つ顧客体験を収集し、ケーススタディとしてまとめました。本稿では、公式アプリによるどんな体験が、どんな課題を持った生活者にどのように受け入れられていったのか、そのプロセスから「公式アプリでファン化を促す」施策の学びを読み解き、解説していきます。

顧客理解

季節ごとの流行に合わせて色々と着たい服を着たいけど、
毎シーズンごとに欲しい服を買っていると
いくらお金があっても足りない

 服に力が入っていないと、元気が出なくてイライラすることが多い。友達と合ってもイライラして暗い気持ちを伝染させてしまったりもした。本当は季節ごとに着たい服を着たいのだけど、何でも買っているとお金が足りなくなるし、1シーズンしか使わなかったらもったいないと思ってしまいます。(35歳女性 東京都)

寺本さん 35歳(仮名)
自由業

 まず、生活者と課題を見ていきましょう。H&Mを利用するようになった生活者のカスタマージャーニーを紹介します。寺本さん(35歳女性 東京都)は元々、「毎シーズンごとに欲しい服を買っているといくらお金があっても足りない。」という方です。自身は目指したいあり方として「季節ごとの流行に合わせて色々と着たい服を着たい。」とも考えている、世帯年収300~400万円ほどで、自由業、独身の女性です。

 また、寺本さんは、「暗い色の服を着て、沈んだ気持ちでいたときに、暗い気持ちを友人にも伝染させてしまったりした。」という課題を感じており、できれば「明るい色の服を着て、自分も回りも元気でありたい。」という理想を抱いている女性です。

 では、このような状態の寺本さんに、H&Mがどのような変化をもたらしたのかを解説します。

ブランドの役割と顧客体験の変化

H&Mで
成立した価値

※2

その時々の流行りのアイテムを、安く買えてすぐに取り入れられる。

ブランドが果たした役割

 寺本さんは現在、今シーズンしか流行しなさそうなアイテムもH&Mならリーズナブルに取り入れられるためH&Mを利用しており、現在はファンになっています。最初は「店頭でアプリをダウンロードして、その場で購買したレジで店員さんに今アプリをダウンロードすると10%オフになってお得ですよと説明を受けたので、ダウンロードしました。」という体験を経ており、「公式アプリ」「値引きクーポン」という特長が「その時々の流行りのアイテムを、安く買えてすぐに取り入れられる」という認識を寺本さんに提供したことが、ファン化するに至らせたと考えられます。

顧客体験の変化

 寺本さんはH&Mを利用する以前、「暗い気持ちを友人にも伝染させてしまったとき」に今のままでは良くないと気づかされました。その後H&Mを利用することで、明るい色や、柄などの服が多く、着ているだけで気持ちが明るくなるようになった。休みの日にあまり家にこもらずに外に出かけることが増えた。と体験が変化しました。
図解

H&Mの顧客体験事例から紐解く

「公式アプリ施策でファン化を促す」の成功要因

※上記図解のように生活者の行動動線とそれに紐づく心理変化を明らかにするカスタマージャーニーの使い方や創り方は
カスタマージャーニーの教科書」をご覧ください。

https://www.journey-navi.com/

体験価値の
市場規模

5-15万人

 本セクションではブランド視点で顧客体験を読み解いて、「公式アプリでファン化を促す」施策のヒントを探っていきます。今回の顧客体験から得られた学びをまとめると、上図のような構造になっていることが読み取れます。

 このストーリーでは、寺本さんは元々「季節ごとの流行に合わせて色々と着たい服を着たいけど、毎シーズンごとに欲しい服を買っているといくらお金があっても足りない。」という課題認識を持っていました。しかし、H&Mの公式アプリと店頭での値引き誘導が機能したことで、「以前は流行りのアイテムも値段を見て買うのを躊躇していたが、今は今シーズンしか流行らなさそうなアイテムも、安く買えるならとりあえず買ってしまえばいいことに気づいた」という気づきを寺本さんに与えました。

 その結果、寺本さんの「季節ごとの流行に合わせて色々と着たい服を着たい」という理想と、「いくらお金があっても足りない」という課題は、H&Mの「その時々の流行りのアイテムを安く買えて、すぐに取り入れられる」というブランドの価値によってクリアされたと言えます。そしてその結果、寺本さんのファン化に成功しました。また、同様の体験は「5-15万人」の顧客層に訴求できたと推定されます。※1

応用可能性~本事例の学び

課題

金銭的負担

欲しいものを買おうとすると際限なくアイテムがあり、お金がかかるので購入をセーブする行動が起こりうる、アパレルなど趣味性の強い商品カテゴリの課題。

クーポン等で安くなるなら
とりあえず買ってしまえばいいという気づき

結果

一時的に使うモノや試しでの利用等、金銭的負担が下がることで購入のハードルが下がり、ショップ自体のファン化につながった。

 
 今回のアパレルのように、趣味性の高い商品カテゴリの場合、欲しいと思ってから冷静になって金銭的負担を鑑み、購入を控える行動が起こりがちだと考えられます。

 しかし今回の例のように、アプリにより「そもそも安く買える」という認識をショップブランド自体に与えることによって、消費者は「以前は流行りのアイテムも値段を見て買うのを躊躇していたが、今は今シーズンしか流行らなさそうなアイテムも、安く買えるならとりあえず買ってしまえばいい」ということに気づき、安く買えるショップで好きなものを(そのシーズンだけしか使わないとしても)気兼ねなく購入するような顧客体験を実現しています。

 このような展開は、SPA業態などで製造コストを抑え、安価で商品展開できるブランドに応用可能で、安い代わりにショップのファンにして多品目を購入してもらう方針に応用できると考えられます。

注記
※1 体験価値の規模推定値は、市場調査結果(n=3000)データと人口統計データより、調査データ内の”同じ商品を購入した消費者”かつ、”本稿で紹介した消費者と類似のインサイトを持っている人”の規模から計算しています。

※2 消費者が実際に認識した価値です。企業やブランドが、当初狙って生みだそうとした価値とは異なる場合があります。